みなさん、こんばんは!一人でも多くの人に焼酎を飲むきっかけを与えたい。
焼酎プロモーターの亜樹穂です!
突然ですが、質問です。
本格焼酎は芋、麦、米、黒糖等様々なジャンルがあります。
これらのジャンルの中で最も多く生産されている本格焼酎はどれだと思いますか?
ご存知の方も多いと思いますが、最も生産量の多いのは芋焼酎です。
本格焼酎と聞くと、芋焼酎がまず頭に浮かぶ方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
芋焼酎の味と香りの要となる「さつま芋」についてお話できればと思います!
芋焼酎の原料として定番の「黄金千貫」が生まれた背景。
最近流行のオレンジ芋や紅芋、白芋についても触れるので、芋焼酎の原料であるさつま芋に少しでも興味のある方は楽しめる内容となっています。
さつま芋ごとにオススメの芋焼酎も紹介しますので、ぜひお試しを!
本格焼酎で最も生産されているのは芋焼酎!
日本酒造組合中央会がまとめた19年(1~12月)の本格焼酎課税移出数量は、40万9023klとなり前年の42万5309klと比べ3.8%減だった。引き続き減少傾向にはあるが、減少率は前年比で小さくなった。
「日本食糧新聞 本格焼酎特集」2020.5.11
原料別でみると「芋」が18万2170kl(構成比44.5%)で前年比4.1%減。「コメ」は3万4569kl(同8.5%)で同4.9%減。「麦」は17万1223kl(同41.9%)で同3.1%減。「そば」は7994kl(同2.0%)で同8.4%減。
本格焼酎に使われる原料は、芋と麦が過半数を占めているんですね…!確かに飲食店でも酒販店でも見かけることが多いなと思っていましたが、数字で見ると改めて実感しますね!
これもご存知の方もいらっしゃると思いますが、これだけたくさん造られている芋焼酎のほとんどが「黄金千貫」で造られています…!
そのようなお話も含めて、ここからさつま芋のことを掘り下げていきたいと思います!
まずは、焼酎原料のさつま芋の歴史からお話していきます。
昭和20年(1945)頃の焼酎原料さつま芋は「農林2号」
昭和20年代は、「農林2号」というさつま芋が焼酎原料によく使われていました!
元々は片栗粉などの原料となるデンプン原料品種と呼ばれるさつま芋だったのですが、九州の気候や土地とも相性が良く大量に生産できるので焼酎の原料にも使われています。
参考)さつま芋品種解説
昭和時代の半ばは、まだ「黄金千貫」がなかったんですね…!これは驚き。「農林2号」は今では作っている農家も少ないのだとか。幻のさつま芋らしいですよ…!
「農林2号」が使われた芋焼酎はシンプル×パワフルな味わい
【小正醸造】『小鶴初心者お断り』
- アルコール度数 25度
- 原材料 農林2号、黄金千貫、米麹
写真は小正醸造さんのHPよりお借りしました。
【山元酒造】『農林2号 25度』
- アルコール度数 25度
- 原材料 農林2号、米麹
写真は山元酒造さんのHPよりお借りしました。
『小鶴初心者お断り』は、焼酎のイベントで頂いたことがあります!とてもパワフルな芋の香りだったことをよく覚えています。笑
昭和時代の幻のさつま芋を復活させることがすごい!
昭和41年(1966)に「黄金千貫」誕生!
「農林2号」同様に「黄金千貫」も当初は、デンプン原料品種のさつま芋として誕生しました!しかし、コーンスターチの台頭により他の用途への転換を求められることになったそうです。
「黄金千貫」は、病気にも強く、たくさん収穫できる点から焼酎原料品種に方向転換します。
焼酎の原料となるさつま芋を必要としている時に「黄金千貫」だと必要量を供給できたので、どの蔵元も「黄金千貫」に合わせた焼酎造りをするようになったそう。
そのため、「黄金千貫」は芋焼酎づくりの定番のさつま芋になったと言われています。
「黄金千貫」が使われた芋焼酎はサッパリ×シンプルな味わい
【佐藤酒造】『白麹仕込み 佐藤』
- アルコール度数 25度
- 原材料 黄金千貫、米麹
吉田屋さんのHPよりお借りしました。
【霧島酒造】『黒霧島』
- アルコール度数 25度
- 原材料 黄金千貫、米麹
霧島酒造さんのHPよりお借りしました。
こちらは飲食店で見たことある方も多いのではないでしょうか?
個人的に黄金千貫で造られた焼酎は「安心感」を感じますね。いつもと変わらないこの味って、なんだかほっこりとした気持ちになります。
ちなみ黄金千貫は、食用として食べても美味しいです!笑
さつま芋のニューカマーはとにかくカラフル!
さつま芋は、色で大きく4種類に分けることができます。
「白芋」「紅芋」「オレンジ芋」「紫芋」です。
先程紹介した「農林2号」と「黄金千貫」は、「白芋」の部類に入ります。
それぞれのさつま芋を色分けすると下の図のようになります!
爽やかな柑橘系の香りが楽しめる白芋
「ジョイホワイト」は、1994年に誕生したさつま芋です!
このさつま芋で焼酎を造ると、柑橘系、お花の香りがします。
その理由は、芋焼酎に含まれている香りの成分「リナロール」が「黄金千貫」の5倍以上入っているからだそうです!
「ジョイホワイト」が使われた芋焼酎はフルーティー×パワフルな味わい
【吉永酒造】『利八ジョイホワイト』
- アルコール度数 25度
- 原材料 ジョイホワイト、米麹
ひご屋さんのHPよりお借りしました。
【大石酒造】『がんこ焼酎屋』
- アルコール度数 25度
- 原材料 ジョイホワイト、米麹
岩井寿商店さんのHPよりお借りしました。
「ジョイホワイト」は私と同世代のさつま芋なんだ!と勝手に親近感を持っています。笑 柑橘系、お花の香りと共に主の素材の味もしっかり楽しむことができそうですね!
りんごのフルーティーな香りが楽しめる紅芋
「紅あずま」も平成に入ってから普及したさつま芋です!
食用さつま芋なので、スーパーで見たことある方も多いのではないでしょうか?
「紅あずま」は、大きい枠だと紅芋という種類に含まれます。
なんと、日本におけるさつま芋の生産量の4割は紅芋が占めているのだとか…!
「紅あずま」が使われた芋焼酎はサッパリ×フルーティーな味わい
【中国醸造】達磨 黒麹仕込み 紅あずま
- アルコール度数 25度
- 原材料 紅あずま、米麹
写真は中国醸造さんのHPよりお借りしました。
【原口酒造】さつま夢街道
- アルコール度数 25度
- 原材料 紅あずま、紅さつま、米麹
写真はひご屋さんのHPよりお借りしました。
食用さつま芋を焼酎の原料に使うという試みが面白いですね!
焼き芋を食べた時のほっくりとした甘みが感じられそう!「赤芋仕込み」と書いてある焼酎は、紅芋が使われているのでぜひお試しを!
【補足】黄金千貫の子が紅あずま!
さつま芋の系譜図を見てみると白芋と紅芋の親子関係が伺えます。
見た目も味も異なりますが、「黄金千貫」の子が「紅あずま」というのはさつま芋豆知識になるかも…!?
マンゴーのような南国の香りが楽しめるオレンジ芋
オレンジ芋には、β-カロテンが豊富に含まれています!
ニンジンにもたくさん入っている成分と同じなのでオレンジ色なのだとか。
また、「β-イオノン」という香り成分はオレンジ芋特有のもの。
そのためオレンジ芋で造った焼酎は、南国っぽいマンゴー、パッションフルーツを思わせる香りがすると言われています。
「ハマコマチ」が使われた芋焼酎はサッパリ×フルーティーな味わい
【柳田酒造】千本桜ハマコマチ
- アルコール度数 25度
- 原材料 ハマコマチ、米麹
写真はいまでやさんのHPよりお借りしました。
【大口酒造】伊佐小町
- アルコール度数 25度
- 原材料 ハマコマチ、米麹
写真は大口酒造さんのHPよりお借りしました。
オレンジ芋で芋焼酎を造る過程を『dancyu』で読んだことがあるのですが、本当に鮮やかなオレンジ色で驚きました。これもさつま芋なのか…!と。
オレンジ芋の芋焼酎はまだまだ飲んだことのないものが多いので気になります。
赤ワインを思い出させる紫芋
紫芋には、アントシアニンという色素が含まれているため果肉が紫色になっています。これは、ブルーベリーに含まれている色素と同じです!
紫芋には「ジアセチル」という香り成分が豊富に含まれています。
そのため、紫芋で造った焼酎はヨーグルトや赤ワインを彷彿とさせる香りを感じると言われています。
「アヤムラサキ」が使われた芋焼酎はサッパリ×フルーティーな味わい
【大海酒造】くじらのボトル 綾紫黒麹
- アルコール度数 25度
- 原材料 綾紫、米麹
写真は大海酒造さんのHPよりお借りしました。
【西酒造】綾紫印
- アルコール度数 25度
- 原材料 綾紫、米麹
写真はひご屋さんのHPよりお借りしました。
紫芋の焼酎はどこかワインっぽい芳醇さが感じられるのは、紫芋にしか入っていない成分が要因だったとは…!
赤ワイン好きな方で、本格焼酎を飲んでみたいと思った方は紫芋の焼酎から入ってみてもいいのかもしれません。
【補足】オレンジ芋と紫芋の先祖は紅芋…!
オレンジ芋や紫芋はどうやって生まれたのか調べたのですが、「紅乙女」や「サツマヒカリ」は紅芋の仲間です。紅芋の品種を交配するうちにオレンジ芋や紫芋が誕生したのかもしれません。
さつま芋の新しい品種の開発は、5年以上かかると言われているそうなのでm道のりが長いそうです…!
おわりに
今回は「さつま芋の種類から芋焼酎を見つけてみよう!」をテーマに記事を作成してみました。
いかがでしたか?芋焼酎という大きい枠の中には、たくさんのさつま芋の種類があることだけでも伝わっていたら嬉しいです!
参考文献)『dancyu 合本 本格焼酎。』
『dancyu 読本 本格焼酎。』
小林晃「焼酎原料用サツマイモ―品種開発の変遷と今後の展望―」日本醸造協会誌、114巻2号P71-78、2019年2月
今回の記事作成は、芋焼酎のことを深く知るきっかけになり
とても勉強になりました!
今後は、芋焼酎を選ぶ時にどのさつま芋を使っているものが飲みたいかも指標に入れてみようと思います◎
少し、マニアックなお話になったかもしれませんが気になったボトルの芋焼酎を気軽に試してもらえると嬉しいです!
投稿者プロフィール
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焼酎プロモーションメディア「RANBIKI」編集長/焼酎プロモーター
好きなものはあん肝と白子。趣味は美味しい飲食店めぐりと酒屋さんめぐり
学生時代に本格焼酎と出会い、「一人でも多くの人に本格焼酎を飲んでもらいたい」「焼酎=パワフルのイメージを払拭したい」想いが強くなる。
その後独学で焼酎の勉強を始める。2021年3月に焼酎唎酒師を取得。
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